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歌う!おおいた 発足

 海外のいろいろなところでこれまで歌ってきて、「あなたの故郷の歌を聴かせて」と言われたことがよくありました。そんな時、自分の引き出しからいろいろ引っ張り出そうとするけれど、日本列島の時間の流れと比べればどれも新しい歌ばかり。童謡を歌ってみてもなんだか違う、歌謡曲、ポップスもなんだか自分がうたうには借り物のような気がしてくる。美空ひばりを引っ張り出したり武満さんを歌ってみたりいろいろやってはみたけれど、結局私の核心から溢れてくる歌はやっぱりポルトガル語だったりする・・。そんな何年間を過ごした後、伊王島の「こびとの歌」と出会い、日本のうたと称して、昔の音源を片っ端から聞いては歌掘りをはじめました。歌う以上は中途半端が嫌なので、夏休みの自由課題のように、現地に足を運んでは、歌に導かれて出会う土地や人々の面白さ、日本の多様さにハマりにハマって、これこそ私の日本語の歌と思えるような宝物に出会えました。「クレオール・ニッポン」はその果実です。


 1回目のNNNドキュメント「ニッポンのうた」が放映された後、大分県の方から、初めての歌発掘依頼が来ました。大分県下の800曲近くある古い歌の音源から、昔の歌を蘇らせて欲しい、と。これまで結構地味にやってきたこの歌発掘をオフィシャルに依頼していただいたので、気力満点、やるなら200%でやりまする、と音源聴いて大分の郷土資料、書籍を買い込み、歌を10曲くらいに絞りました。6月と8月は大分に長期滞在して、歌の故郷を尋ねたり、重要な人にお会いしたり、毎日驚く発見の日々を過ごしました。

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この旅の模様はクレオール・ニッポンの旅おおいたのFBページで随時更新中です。

これまで割と地味にやってきた歌探しも、大分ホルトホール、能楽堂あげてのチームが待っていてくれて、一人では追いつかなかったことを組織的に行うことができました。最強の相棒、林弘美さんが毎日大分県内どこまでも一緒に動いてくれて、OBSテレビの藤沢女史も密着して感動、爆笑シーンを撮りためてくれています。どこへ行っても導きの人が現れて、私たちの歌探し、人探し、忘れられた時間探しを手伝ってくれています。

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玖珠にて、林弘美さん&OBS藤澤さん!

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episode 1

初めて玖珠に古いわらべ歌を調べに行った時、三日月の滝を訪れました。京都から来た醍醐天皇の孫娘・小松女院の悲恋が伝わる瀧神社の前の赤い橋で、軽トラのおいちゃんに声をかけられました。気になっていた棚田について聞くと、平成の大嘗祭で主基斎田に選ばれたそうで、その時の写真を見せてもらいました。なんとこの高浪さんは玖珠の神社の総代で、瀧神社の穴井さんは京都から来て52代目という。その後、高浪のおいちゃんは警視正のごとく、玖珠、日田の歌発掘を成し遂げてくれています。

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episode2
中津の青のり取り歌の里を訪ねて散策中に「何かお探しですか」と声をかけてくれた武田さん(右)に、歌を探しています」と答えると、「それならクロちゃんがいいでしょう」と連れて行ってくれた西蓮寺は、なんと黒田官兵衛の末弟のお寺でした。ご住職でミュージシャンのKUROちゃんこと黒田さんに「絶対に開けるなと言われていて黒田官兵衛の大河ドラマの時に開けてみたらすごかった、という黒田家が姫路から持ってきた御本尊を見せていただきました。すごかった・・・。中津の灯篭祭りの時に「青のり取り歌」ですでに共演も。そして驚く再会が。ブラジルのリオデジャネイロでのコンサートを11年前に組んでくれた柳井さんと境内でばったり・・なんと中津の人で37年ぶりにブラジルから帰ってきたのだそう。

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episode3

リオ帰りの柳井さんから誘われて、国東の姫島の盆踊りに行ってみると、ひじきを買いに入ったお土産やさんの宴会に混ぜてもらい、「歌上手な人を紹介してください」と言ったら、隣に座っていた漁師のおいちゃん松原さんがものすごい歌上手でした。姫島の高級車海老を前日250匹も釣ったらしく、手ずから向いて食べさせてくださいました。その口説きで車海老も大漁!

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episode4

豊後は実は長崎から20年も早くキリスト教が伝わったところであり、石に刻む文化のある国東をはじめ、大分県の至る所にキリシタンの史跡があります。ミシュランに載る美味しい讃岐うどんやさん「へんろみち」で朝昼はうどんマスター、夕方からキリシタン研究に身を捧げる、大将こと木内さんに、驚くような史跡ばかりを案内していただきました。ちょっとスリリングな「5時から墓場」。お盆はテレビのクルーと国東の林を掻き分け、見にいきました。残念なのが歌が残っていないこと・・石像に染み込んでいる音の記憶をたどるのみです。


こんな濃密な歌探しには、多くの学びがありました。現代の大分県内といえど、津々浦々で歌も人も暮らしも風景も多種多様でした。歌そのものも貴重ですが、その歌を歌っている人や、かつて歌っていた人たちを知っている人たちも貴重です。6種類ある盆口説きを踊れてそれぞれのリズムで口説ける最後の人(87)に玖珠の山中でお会いしたり、佐伯の山裾の村で明治生まれの女性がみんなを楽しませるためにやっていた祝福芸「えびす回し」、その傀儡人形に山を越えた蒲江の海辺で出会いました。臼杵、姫島、国東・・・行った先々で「こんなかっこいいグルーヴがあった!この人がいなくなったら、この酔わせるようなノリはなくなってしまうのだ!」というような最後の歌い手に会いました。もう亡くなってしまった歌のうまい人たちから学んだという稀有な人たちにも出会えました。とにかく、かっこいいのです。

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佐伯市弥生町の五十川千代見さん。先見の明で明治初期生まれの古老から多くの歌の歌詞を書き取っておられた。


そしてこんな考えが浮かびました。

映像記録したり、知られざる歌い手を舞台にあげることは容易いけれど、その芸を学び、継承するのはなんて難しいだろう。保存会として発足できないような小さな集落や、日常的すぎてこうした歌い手の価値をわからないまま失われてきた歌は数しれずある。それを今、私も含め、土のついた歌を少しでも学ぶこと、いや、五体に刻むことこそ最重要課題で、また最高に楽しいことなんじゃないか。身軽に気軽にでも深く、核心に迫るように、先人の歌をノリを身体に刻もう、と。


こんな思いで、「歌う!おおいた」を発足します。チームでこれからいろいろな企画を進めていきます。私もこの身に継承するために通います。歌を学ぶツアーもする予定!ぜひ県外からも集まってください。

来年2月23日には、ホルトホールでクレオール・ニッポンのコンサートを、来年9月には歌を探す旅で出会った素敵な人たちとホルトホールで櫓を組んで、宴をする予定です。


歌を五感で味わい、五体に刻む。

野ざらしの歌を知ることは、きっと心の糧になると思います。

決意のブログでした!


おまけ

歌う!おおいた 名人図鑑(他にも多数)

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臼杵・野津の柳内利夫さん(87)

Job 元・旅する大工

吉四六さんの里の口説マスター

そのグルーヴで夜通し躍らせる

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玖珠・山浦の梅木由美(よしみ)さん(87)

Job ナバ山師(シイタケ栽培)

湧き水の郷のジョアン・ジルベルト

こんこんと情感を歌いあげる

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日田・上津江村の川村千恵子さん

Job 民謡講師

上津江村のディーヴァ

亡き夫の夢を叶え、郷土の歌をうたう

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国東の岡泰弘さん(写真右)

Job 元酒造り(萱島酒造)現在農家

美声の稲刈り王子

先人から歌を受け継いだ希望の若手

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有馬孝さん&平川和秀さん

Job 元国東市役所員

古の笑いを蘇らせる

ちょっとはにかむ豊後漫才師


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宇目の歌げんか保存会

Job 歯科医院長、いろいろ

子供達のブルースを歌いつぐ永遠の少年少女たち

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木浦鉱山の米田実さん

Job 元郵便局

鉱山(ヤマ)の語り部

亡き妻、米田寿美さんの襖に描いた想いをうたう


by miomatsuda | 2018-08-24 17:46 | ◆日々雑感/Notes

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