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祖谷の歌「花とり」

先月、祖谷の吾橋小学校でコンサートに呼んでいただきました。校長先生が平石さんから西祖谷の民謡を取り上げたという私のことを聞いて、子供達と歌ってほしいと丁寧なお手紙をくださったのがきっかけです。
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右に見える白い建物が小学校。

日本のうたのプロジェクトは、歌を掘り起こすだけでなく、地元の方に聴いていただくのを目標にしてきました。それは、どこの国の歌も同じで、歌を育んだ土地の人にこそちゃんと伝わるような歌をうたいたいと思っていたのです。だから、今回は地元の方と一緒に歌える最高の機会をいただいたと思いました。
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クレオール・ニッポンの歌はほとんどがもう歌われていない歌、資料にしか残っていなかった歌ばかりです。そのなかで、徳島県の秘境・祖谷の歌は、歌をうたい継ぐ平石安雄さんのような方のおかげで、子供達に伝えられています。平石さんのお父様・金雄さんの代に、歌を残そうと尽力された園尾正夫さんという郷土史家がおられました。その園尾先生が、祖谷のいろいろな歌を聴いて、クラリネットを吹きながら採譜して、的確で心のこもった文章を添えて、歌が資料として残ったのです。とても貴重です。園尾先生がまとめた資料は、祖谷の民謡という小さな冊子になっていて、昔の祖谷の生活が伝わってくる素晴らしい記録です。
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そこに載っている「花とり」。
土佐から伝わったとされる古い唄で、平石さんも言葉のひとつひとつの意味をご存知ないくらい古めかしい踊り唄。しかも、男女ペアで踊るという、ほかにはあまり見られない踊りだそうです。酒宴の最後に歌い踊られ、好きな異性にてぬぐいの端(これを「はな」という)を差し出し、自分も好きならその「はな」と取る、だから「はなとり」というのだそうな。「花とり」と書かれます。私はこの歌を金雄さんの録音から知って、なんてグルーヴィーないい歌だろうと、携帯に入れてよく聴いていました。

前回のドキュメンタリーの撮影の時に、平石さんと保存会の皆さんに生演奏・生踊りを見せていただきました。平石さんの唄に合わせて、大空と山々を背景に、女性達がてぬぐいを片手にステップを踏む姿はなんともおおらかで美しかった・・・!私はぜひこの唄をうたいたい、そして子供達に踊ってほしい、と思って、平石さん、校長先生にちらっとお願いしておきました。

クレオール・ニッポントリオのリハーサルでも、聴いたみんなが踊れるような速度でやろう、6/8拍子の感覚を入れてグルーヴィーにしようと言って作っていき、ちょっとブラジルのカンドンブレのような素敵なトランスになっていきました。これでみんな踊ってくれますように!

そして、1ヶ月後、吾橋小学校を訪れました。
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まず、子供達のステージ。全校生徒10人(うち保育園2人)の歌!1ヶ月の間に、新しいレパートリーもできていました。可愛い振り付け付き「来なえ〜毎晩」(祖谷甚句)
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ステージには、祖谷のすすきなど、可愛い飾り付けもしてくれていました。

私たちのステージの最後に、アンコールで「はなとり」。ドキドキ・・・皆さんが気持ちよく踊れたら、合格です。
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イントロは亮さんのビリンバウで、ゆるやかに始めて、鶴来さんのピアノが入って、「様はエー、ヨウヤレ、行かぬか、お蔵の瀬戸へこうごめの」と始めます。
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歌いながら泣きそうになりました。目の前で、子供達と保存会の皆さんが体育館中で踊ってくれている!子供達は1ヶ月でこの踊りを習ってくれていたのです。そしてピョンピョンと飛び跳ねて踊ってくれている!私たちのヴァージョンで!
平石さんもペースもちょうどよかった、と言ってくださって、ほっとしました。
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新しい歌が、クレオール・ニッポンのレパートリーに加わりました。私にとって、地元の方々、子供達との交流のなかで生まれた理想的なヴァージョンです。
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それにしても祖谷はやっぱり奥が深い。翌日も東祖谷へ連れて行っていただいたり、書ききれない美しさ、面白さ。
民俗学のプロジェクトも進行中で、また来月も行きます!
by miomatsuda | 2016-11-01 14:03 | ◆日々雑感/Notes

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