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時間に咲く花

先週、3泊だけ、仙台へ行ってきました。
南米に経つ前に、どうしても行きたかったのです。

仙台にはブラジル人のお友達で、以前コンサートを企画してくれた大槻ヴァレリアさんがいます。彼女に会いたくて、そして被災地を訪ねたくて、行ってきました。ヴァレリアさんは、サンパウロ生まれ、お祖父さんが宮城の出身。宮城の日本人の旦那さんとともに、宮城に暮らすブラジル人や外国人のために、Brazil Cafe http://brazilcafe.exblog.jp/ を通して以前から地域のために活動してきましたが、今回、震災の後、復興を応援するため、世界中に仙台の情報を発信しています。

彼女は若林区に夫婦で住んでいて、家は大丈夫だったものの、親戚で何代も続いていた家を流され被災した方が大勢います。命があることに感謝しながら、今こそ皆で助け合おうと、持ち前の日系ブラジル人の逆境に負けない助け合い精神で日々頑張っています。
震災から何日か後に、大阪から20人のブラジル人のキリスト教信者さんたちが400人分のお肉を持って、避難所でシュハスコをして、本当に喜ばれたそうです。

さて、泥かきのお手伝いをするつもりが、雨続きでセンターが閉まっていたので、教会のボランティアの方が石巻まで連れて行ってくれました。もう3ヶ月経ったのに、津波の荒れ狂った様子がまざまざと残っていました。人の手が入り、ましになったとはいえ、あの惨状には言葉を失いました。(ボランティアの人たちの頑張りで、だいぶヘドロは掃除されてはきましたが、まだ人出が足りていないようです)

牡鹿半島に入り、自衛隊の車両しか入らないようながれきの骸の街を通り、雄勝に行きました。雄勝は、私の曾祖父の実家があったところで、それから身一つで大陸(旧満州)に渡り、まだ会ったことがない親戚が大勢住むところで、いつか行ってみたいと思っていたところでした。硯の産地で、また、伊達政宗特注の大型船などを建造していたそうです。海とともにある町だったのです。その防波堤もむなしく破れ、町は壊滅。町役場の上には、バスが乗ったまま、以前の面影は、ひしゃげたお寺のお堂や、「工芸館」の看板にしかみることができませんでした。

この惨状に、サラエボを思い出しもしました。違うところは、サラエボや戦争の後の街は、みな人間が破壊したものだということです。東北は、津波という人間には抗うことのできない、自然の力によってだということ。地球が肩をすくめたような、自然の力によって、人間の培ってきたもの、耕した畑、守ってきた家は一瞬にして奪われるのだ、とまざまざと示していました。

雄勝に入った時に、たくさんの鳥のさえずりが聴こえました。キジや小鳥が車の前を横切り、緑の中でなにごともなかったかのように美しくさえずっていました。曾祖父が好きだったという「美しき天然」の歌「空にさえずる鳥の声、峯より落つる滝の音・・・」と口ずさみたくなるように、聴こえるのは、鳥のさえずりとクレーンの作業の音、あとは静寂そのものでした。そして、がれきの家の骸の横に、ピンクの大輪の薔薇が咲いていました。雄勝小学校の前には、小学生達が書いた看板がありました。
「おがつ、絶対ふっかつ」
その決意の文字を見て、不思議なものです。心に希望が湧いてきました。
あとは、再生しかない、誕生しかない、復活しかない、と。

遠くに住む人間の心にも傷を残した大震災、私は以前と同じようには日々を過ごせない。私も一緒になって復活しなきゃいけない。雄勝を始め、東北の復興と共に歩いていきたい。

ヴァレリアさんとそういった話をしながら、一緒に「人間・復活」プロジェクトを始めることに決めました。仙台も少し海側にいると、まだ手つかずの被災地が広がっているし、被災者の方々も、仮設住宅に入居して、時間はあれど心のケアが滞っているようです。
「ゆっくり何年もかけて、心あわせて復活していかなきゃいけない。街よりも人間復活だね」と話しながら。
日系ブラジルの愛情深い、助け合いの文化はきっと人間復興の力になると思っています。トークライブなどを地域に根付いた場所から定期的にやろう、と決めました。

がれきに咲く花があるように、鳥がさえずるように、人もまた宇宙の神秘的な力で生かされている、だから、復活もできる。がれきの中にあって、心の奥底に芽生えた力がありました。「がんばるぞ、人間! 」

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by miomatsuda | 2011-06-27 12:21 | ◆日々雑感/Notes

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