松田 美緒のオフィシャル・ブログ MIO MATSUDA's official blog
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カテゴリ:◆日本のうた( 4 )

こびとの歌 再考
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 長崎湾の玄関口、伊王島のカトリック集落馬込で100歳近い女性たちのみが覚えていた歌「こびとの歌」は、『クレオール・ニッポン』でとりあげて歌ってから、たくさんの方から心に残ったというメッセージをいただいた。2012年の暮れ、この歌と出逢い、魅了され、歌いたいと思ったことから日本のうたプロジェクトを始めた。歌うごとにいとおしくなるこの歌を聴いてくださった方もまたそう感じてくれるのだと知って、やっぱりうれしい。
 この「こびとの歌」、一寸法師のような小人が仕事にありつけず、大航海に出て、難破して死すが、天国でイエスに救われるという不思議な物語は、現地で調べていくうちに、大正時代の子供劇の劇中歌だったとわかったのは、本に書いたとおりだ。
 この歌についての新しい情報が、先日再訪した秋田県の民蔟芸術研究所の資料室で見つかった。私が見落としてコピーをとり忘れていたのだが、教育庁が昭和63年にまとめた「緊急調査」の本の冒頭に大変丁寧に歌の出自が記載されていたのだ。長崎で当時調査された方が残してくださったのだろう、本当に貴重だ。そこには、16番地にあった「聖心女学校」で学んでいた伊王島出身の山崎イセが持ち帰り、伊王島に伝え、それがわらべ歌として定着したとあった。これは、2012年に当時100歳の本村トラさんにお話を聞いた時に「16番地で教えをしよった人が持ち帰った」とおっしゃった話と重なる。
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 聖心女学院は、「信徒発見」で名高いプチジャン神父によってフランスから呼び寄せられた4名の修道女が、1881年に大浦5番地に修道院を開設し、それが1898(明治31)年に16番地に新築移転した時に創設されたそうである。それ以後、長崎のかつてのキリシタン集落各地から、この女学院へ多くの女学生が通ったことだろう。それなのに、どうしてこの女学院で教えられたこうした歌は伊王島のみに残ったのだろう。だが、伊王島の施設にいらっしゃった対岸の外海町黒崎出身の易さんもこの歌を黒崎教会の前にあった古御堂(ふるみどう)で習ったとおっしゃっていた。もしかすると、今残っていないだけで、長崎の他の島や町でもこの劇は子供達に教えられたのかもしれない。だが、わずかばかりの資料、口承、記憶として残ったのは、伊王島のみなのだ。それには、戦争と原爆の惨禍が関係しているかもしれないと思う。
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 歌は移動する人によってほかの場所へと旅する。ただ、この歌は、意志を持って伊王島そして黒崎へともたらされ、大正デモクラシーの頃、子供達に教えられ歌われた。興味深いのは「わらべ歌として定着した」ことにあると思う。それは彼女達の少女時代の懐かしい記憶と結びついているのだ。これを歌っていた少女達のなかで私がお会いできたのは102歳、96歳、94歳のおばあさんたちだけで、その中のお一方は、この前伊王島を訪れた時にすでにお亡くなりになったと知った。今思えば、本当に貴重なお話を聴くことができたのだ。そうしたお話は、今聴かないと永久に失われてしまったのだろう。それは多様な日本のほんの一部でしかないけれど、きわめてリアルで心躍るひとびとの記憶であり、過去と今の私たちをつないでくれるたくましい綱なのだ。
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写真 畠山浩史
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by miomatsuda | 2015-11-22 21:27 | ◆日本のうた
日本のうた名古屋ライブ 9/10
9月10日、「日本のうた」ライブで名古屋へ行きます。韓国ツアーを終えて、初めてのライブです。名古屋でも初めてです。私が2年程前から探し始めたもうひとつの日本の歌です。
ポルトガル、ブラジルと縁深い歌(「アンゼラスの歌」(長崎・伊王島)や「移民節」(ブラジル)から、最近再び訪れた徳島県祖谷の山里の美しい民謡、瀬戸や東北の海の歌、ハワイの日系移民の歌、など、日本の多様さと美しさを教えてくれる歌ばかりだと思っています。
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NIHON NO UTA painted by Ryo Watanabe
「日本のうた」では、パーカッショニストで画伯である渡辺亮さんに絵を描いていただいています。レパートリーの歌にちなんだテーマを亮さんにお伝えすると、何日かしたら、魔術師の仕業のように生み出され、送られてくる作品にいつも感動させられます。特にこの作品に涙しました。伊王島の「アンゼラスの歌」のために描いてくださった「母子」。言葉だけじゃ伝えられないもの、人の有様、時を超えた心・・それを音と一緒に、渡辺亮さんの絵が伝えてくれます。

「アンゼラスの歌」ビデオクリップ 


名古屋ライブ
松田美緒 「日本のうた」初・名古屋 
9/10(TUE)at 空色曲玉
(名古屋市中区新栄3-16-21)
松田美緒(うた)鶴来正基(ピアノ)渡辺亮(パーカッション)
Open 18:30 Start 19:30
Charge 予約¥3,000 当日¥3,500
(別途1オーダーをお願いします)
ご予約・お問い合わせ
【織音工房】
 TEL 090-1278-7284 mail: orionkobo@gmail.com
【空色曲玉】
 TEL 052-251-6949

名古屋での初めてのライブ、ご来場をお待ちしています。
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by miomatsuda | 2013-09-08 15:04 | ◆日本のうた
うたの風景
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今回、リアレンジ曲に「原釜大漁歌い込み」南相馬の網漁の歌。

ヤレ 朝の出船に ヤレ 花がさきそろう ヤレ 戻る船には ヤレ 実がなる
エーイエンササエイ 

探し当てたカセットに入っていた原釜のおじさんの歌がものすごく力強くて、リズムはバイーアの網漁の歌とおんなじ。漁師さんたちの身体の動きまでみえてきそう。歌詞の内容もおんなじ。どうしてもやってみたいと思った。

そして海の歌というものは、たくましさのなかに哀しいメロディーがある。
毎日の命のやりとりと、海の神様に祈るこころ。
そして最後の仕上げの力あわせ、どんどんリズムがはやくなる。

大漁だ、SAIKOだよ!というまでに、いっぱいのドラマがあるんだな。
CAYそして九州ツアーでやります。楽しみにしていてください。
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サンヴィセンテ島の浜辺
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by miomatsuda | 2013-05-16 23:34 | ◆日本のうた
海がつたえた思い
5月29日の「日本のうた」vol.5とそれに続く九州ツアーのためのリハを昨日したところ。
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photo by RYU

今回のテーマは「旅することば」と「海」。海をこえて旅する人たちがことばを伝える。そのことばは新しい世界の風景と人と物語とまざりあって、地球上で新しい物語を、うたを生む。大西洋のクレオールの島国カーボヴェルデで生まれた「SAIKO」は、そんな歌。

ほかにも今回は、戦前にミクロネシアで生まれた日本語のうたで、今は小笠原の民謡になっている「レモン林」(パラオでは「レモングラス」)。このうつくしくも切ないサウダージは、カーボヴェルデの歌となにもかわらない。日本とミクロネシアの両文化を持つ人たちのなかで生まれた、心をうつ太平洋のクレオールソング。

そして、ハワイの「ホレホレ節」。よく知られた話ではあるけれど、ハワイのサトウキビ農場で働く女性達のうた。そのときの現場監督はポルトガル人が多かった。ウクレレも、ポルトガルからきた楽器。ホレホレはハワイ語で刈り取られたサトウキビの葉を剥がす作業の意味。日系移民1世のひとびとは、故郷を遠く離れて、想像しがたい苦労のさなか、現地の彼らの間だけで共有できることばを生み、うたに紡いできたのだ。

それは、ブラジル移民の「穫り入れ行進曲」や「子牛の名前」もおなじ。なんだかちょっとかわった日本語のなかに、きれいごとじゃすませられない、地球の向こう側で生きていく必死さと喜び、悲しみ、彼らだけが共有しえた「ブラジルのなかの日本」を感じる。炭坑節は「宵のベランダの磨りガラス」ではじまり、「五木の子守唄」の歌詞は「憎いいくさはどがん衆がさすの、えらかお方がいいつける」。ブラジルの大地でこそ生まれた、日本語のうた。

バイーアのサルヴァドールがブラジル(ポルトガルの植民地としての)の首都となったのと同じ年、日本にキリスト教がつたわった。その頃、大西洋は大航海時代真っ盛り。イエズス会と商人は同じ船で、奴隷と黄金と聖書を積んで、大西洋を往復していた。自分たちの宗教を禁じられ洗礼を受けさせられた奴隷たちとその混血のこどもたちは、マリアに彼らの大地の母を見いだし、うたった。日本ではそれから300年の禁教と迫害を生き残った人たちが、観音にマリアを見いだし、うたった。伊王島にのこるマリアのうたに、大西洋のはるかな歴史と人々の思いがかさなる。

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海がつたえた思い。
大西洋の飛び石、カーボヴェルデのこの海は、そんな思いを受け止めてくれるように温かい色をしている。
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by miomatsuda | 2013-05-10 20:14 | ◆日本のうた